Suno v4.5+の概要
Suno v4.5+は、2025年5月に公開されたv4.5をベースに、7月中旬の“プラス”アップデートで機能拡張とワークフロー改善を施した最新モデルです。従来モデルと比べて生成速度が向上し、1回で最大8分というフル尺の楽曲を出力できるほか、より直感的なUIによりプロンプト入力から完成までの操作が大幅に簡略化されました。
v4.5+では「Prompt Enhancement Helper」が追加され、入力したジャンル名やムードを自動で肉付けしてくれるため、高度な音楽理論を知らなくても詳細な演奏指示を盛り込んだプロンプトを数秒で生成できます。さらにボーカル表現のレンジが拡張され、ウィスパー系からパワフルなビブラートまでエモーショナルな歌唱を再現可能となりました。
アップデート後は“Add Vocals/Add Instrumentals/Inspire”の3モードが使えます。手持ちの伴奏にAIボーカルを重ねたり、鼻歌をフルバンドアレンジに仕立てたり、プレイリストを解析して楽曲をゼロから提案させたりと、用途に応じた入り口が増えました。各モードには「Vocal Gender」「Weirdness」「Style Influence」など細かなスライダーが付き、作風の一貫性を担保しつつ実験的な操作も行えます。
進化したポイント
(1) 音質と尺の飛躍的向上
最大8分までの長尺生成に対応しつつ、2分以降で発生しがちだった音質劣化や“ブツ切れエンド”が大幅に緩和されました。ミックスもバランスが取りやすく、従来より少ない後処理で商用利用レベルに仕上がります。
(2) ジャンル解像度の強化
v4.5世代で拡充されたジャンル分類は、4.5+でさらに精密になりました。たとえば「midwest emo × neosoul」のような複合指定でもアレンジと歌唱の一貫性が向上しており、プロンプトに書いた微細なニュアンス(“ソフトテープ質感”“メロディックホイッスル”など)まで音像へ反映されやすくなっています。
(3) アップロードベースの音楽生成
ユーザー音源を解析して自動でコード進行やテンポを抽出し、AIボーカル・伴奏を上乗せできる“Add”系機能が最大の新要素。従来のテキスト完結型ツールとの差別化ポイントであり、既存曲のリミックスやデモ段階のアイデア膨らましが一括で行えます。
音楽生成AIと音楽市場の変化
最新IMS Business Reportによれば、2024年にAIツールで楽曲・歌詞を制作したクリエイターは6,000万人に達し、消費者の10 %が生成AIを使ったと回答しています。
AI導入は収益面にも波及しており、AI音楽が2025年の業界総収入を17.2 %押し上げるとの試算も示されました。
市場規模でも成長が顕著です。Grand View Researchは生成AI音楽市場を2023年4.4億ドル、2030年には27.9億ドルと予測し、年平均成長率(CAGR)は30.4 %に達すると報告しています。
一方で、AIバンド「Velvet Sundown」がSpotifyで100万再生を突破した事例が示すように、リスナーがAI産か人間産かを認識しないまま楽曲を消費するケースも増加。業界団体は「AI生成コンテンツの明示義務」を求める声を強めています。
こうした状況下でSuno v4.5+のような高度な生成AIは、アーティストの制作補助ツールとしての可能性と、権利保護・透明性の課題を同時に浮き彫りにしています。プロ/アマ問わず制作コストが下がる一方、音源過多による埋没リスクや著作権管理体制の再構築が急務となっています。
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